恥ずかしい

無言で、ファイルを拾う高畑さんに続き、紙コップをテーブルに置き、私も慌てて拾う。

 

座りこんだ瞬間、
高畑さんからイイ香りがした。

 

まつげ…なが。
綺麗な顔だな。
高畑さんて。
男前だとは思ってたけど近くで見ると
ホント整った顔。

 

「何?」

 

「ぁ…いや、スミマセン…です」

 

全部を広い終わり、もう一度私はスミマセンと頭を下げた。
高畑さんは表情を変えず
「や、今日1人でお客さんに対応してたの見たよ。頑張ってたな。」

 

「あ、ありがとうございマス…初めて1人だったので緊張してたんですけど、何とかなりました。」

 

「あっそう。良かったね」

 

 

えぇーっ!!
自分がふってきた話じゃないのぉっ!
何、あっそうって、その返答は!

 

「何か…妹が仕事してるみたいでヒヤヒヤしたよ」
ふっと微笑む。

 

「そお、ですか…ヒヤヒヤさせてスミマセン」

 

何で謝るの、私。

 

あ、おい。」

 

「はいっ。」

 

「それ。」
高畑さんが指差した先は、私の薄いエメラルドグリーンのスーツ。
胸元に薄茶色のシミがついている。

 

「あっ……紅茶だ。」

 

私はハンカチを出して軽く押さえた。

 

「指もじゃないか」
私のハンカチを持った右手の人差し指が少しだけ赤くなっている。

 

「あぁ、こんなの大丈夫です。あとから冷やしますし。」

 

「…ごめん。」

 

そう言って私の手を手首を掴むと
「おいで。」

 

と、私を引っ張り廊下に出て、ツカツカと歩き始めて女子トイレに入った。

 

「ちょっ…高畑さん!!ここ女子トイレですよ!」

 

「いいんだ」
高畑さんは手洗い場の蛇口をひねると、私の指を水で流した。

 

「……………。」

 

無言の時間が流れる。

 

高畑さんは、私の後ろから火傷した方の手を持ったまま、冷やしてくれている。
高畑さんの、か、顔が近い。
呼吸まで聞こえそう。
私、絶対顔真っ赤だ。
私の心臓がスゴい早さで鳴っている。

 

「…大丈夫か」
私の方をチラリと見た。

 

近い!近い!近い!
それ以上振り向かないで!

 

キスしてしまいそうな近さだよ!

 

「ははははいぃ!
大丈夫ですっ!
もう、大丈夫です!!」

 

声、ひっくり返った。
しかも、震えてて恥ずかしい〜。

 

「ホントに?」

 

高畑さんの顔が近い方が大丈夫じゃないんです!

 

「ホントに大丈夫です!!」

 

顔が凄く熱くなって耳まで真っ赤なのが分かる。

 

その様子を見た高畑さんは、ちょっとだけニヤリと笑い

 

「大丈夫じゃないじゃないか…」

 

そして、
水で濡れた自分の手を私のほっぺたにピタリとつけた。

 

「ぎゃあっ!!」

 

あまりの冷たさに
後ろにのけぞる。

 

「た、高畑さん?」
フッと笑うと何もなかったように
高畑さんはトイレから出て行った。

 

あの人…一体何考えてんの…

 

私は深いため息をつくと、水を止め、鏡を見た。

 

顔、真っ赤だ。

 

恥ずかしい…