メール

帰宅してから、コートを掛け、すぐにお風呂を溜めた。

 

ドスドスと部屋に入り、ベッドに座り、バッグから携帯を取り出す。

 

友達の沢田恵子。
いつも、誠二の事で相談にのって貰っていた。

 

「こんな事言うのイヤだけどさ、美優の為になんないよ?
別れたほうがいくない?」

 

恵子は何度かそう言ってた。
私の為に。

 

恵子にメールする。
「今、誠二に会って別れた」

 

送信。

 

 

私は携帯を受信画面にして何となく誠二のメールを読み返したりして、ため息をついた。

 

次に、『中村誠二』のアドレス帳を開く。

 

削除のキーを押す。
−削除しますか?−の文字。

 

私は決定キーに親指を置く。

 

 

 

『大した金額じゃあるまいしなっ』

 

 

 

最後の誠二の笑顔が浮かんだ。

 

私は決定キーに親指を置いたまま動けない。

 

私は携帯にまだ誠二の名前を残したまま携帯を閉じてしまった。

 

しばらくしたらお風呂が沸いた。

 

私はお風呂に入った。

 

体や髪をボンヤリしながらゆっくり洗った。

 

シャワーで曇った鏡を流し顔を見る。

 

私が泣きそうな顔で映っていた。

 

いけない いけない。
余計ツラい。

 

私はザバザバ顔を洗い、湯船に浸かった。
熱めのお湯が気持ちいい。

 

私は無言で右手だけお湯から出して指輪のついていない指を見た。

 

私はこんなに、しんどいのに何ひとつ世界は変わらないんだなぁ。

 

 

でも………
新しい恋だって出来るかも。

 

もうイライラも悲しくなったりもしない。

 

良かったんだよ。
これで。

 

私は右手を湯船に沈めると、目を瞑って顎まで浸かった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

お風呂から上がると、携帯が着信ありのライトが光っていた。

 

携帯を開けると恵子からだった。

 

『美優、えらい!!
よく頑張ったね!
今はツラいかもだけど、絶対良かったと思うから。寂しくなったら、いつでも話聞くよ?』

 

嬉しかった。
『ありがとね
まだつらいけど、頑張る☆』と返信した。

 

それから、もう一度中村誠二のアドレス帳を開き、今度こそ削除のキーを押した。
−削除しますか?−
決定キーに置いている親指に力を入れる。

 

削除。

 

−削除しました−

 

ホントに
サヨナラ…
そんな気分になった。

 

時計を見る

 

23:15

 

私は、電気を消してベッドに入った。
それからちょっと泣いた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
私は知らない間に眠っていた。

 

気がつくとまだ朝の5時前で、カーテンの隙間から覗く窓の外は真っ暗で、シンと冬の寒さを感じさせていた。

 

私は布団を首まで引き寄せた。

 

ふと、閉じかけた目にピカッと光りが。
枕元の携帯を見るとライトが点滅していた。

 

携帯を見るとメール1通。

 

会社の先輩だ。
何?
何かしたっけ?
急いでメールをあける。

 

『夜遅くごめん。昨日の仕事の事なんだけど、渡辺さんに書類渡したかな?ちょっと気になって。渡していたならいいんだけど。
−城木−』

 

渡したよ。
何かあったと思ってビックリしたじゃん。
私は、携帯を開けたまま枕元に置き、また布団をかぶった。