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♪♪〜♪♪〜

 

携帯の、電話の合図のメロディーが流れた。

 

絶対誠二だ。

 

携帯は音楽と共に色んな色に光り、見下ろす私を呼ぶ。

 

………………。

 

 

 

 

キッパリ別れる事、伝えないとね…。

 

私は携帯を取って耳に当てた。

 

「……………はい。」
感情のこもらない声で電話に出る。

 

「美優?俺。
ごめん、ごめんね。とにかく会いたい。部屋行っていいかな…?説明させて?」

 

「いや、もういいよ。来ないで下さい。別れたいの。会いたくない。」

 

「俺は嫌だよ。とにかく会いたい。今から行くから待っ…」
「来ないでって言ってるでしょ!?」
最後まで話を聞く前に私は怒鳴った。

 

「……美優。ごめん。ホント、ごめん。大切なお前にまたイヤな思いさせて…」
ほら、またその言い方。
私が一番大切みたいなその言い方。
頭くる。

 

「切るから。マジでサヨナラ」

 

「待って!!切らないで!!そっち行くから話聞いて」

 

「来ないでって言ってるでしょ!?」

 

「でも開けてくれるまで待つから!」

 

「やめて!!」

 

私は、思わず握り拳を作った。

 

嫌な男。
そんな事したら私が部屋に入れてしまう事わかってて言ってる。

 

「………家は無理。
……近くのファミレスに来て。」

 

「……わかった」

 

このまま電話切ったら絶対に誠二はここに来るって思った。

 

それなら、会って話してこよう。

 

私は電話を切った。

 

出掛ける準備の最中、ホントはまだちょっと誠二が好きで
今ならまだやり直せるかもなんて思ったりもした。

 

だけど…

 

だけど…。

 

出掛ける前に私は洗面所の鏡の自分を見た。
情けない顔。

 

「大丈夫。あんたは前に進むのよ」
私は自分にそう言うと、
鏡の中の目を見て唇をクッと噛んだ。

 

「シッカリしなさい、美優。行ってらっしゃい。」

 

私は小さく呟くと
玄関のドアを開けてシッカリした足取りでファミレスへ向かった。

 

ファミレスに向かう最中、寒さにブルッと震える。

 

うぅ、寒い。
心も寒いのに。
と思いつつ、足早にファミレスへ入った。

 

奥の方の席へ向かう。
コートを脱ぎ、ドリンクバーを1つ注文した。

 

カップが置かれるとドリンクバーへ行き温かいハーブティーを作る。
気持ちをゆったりさせるカモミールティー。

 

3回ティーバッグを上げ下げする。

 

席につくと、ゆっくりカモミールティーを口に含む。

 

他のお客さんの楽しそうな声が私を更に寂しくさせた。

 

「美優っ」

 

顔をあげると、誠二がいた。

 

私は表情を変えず、「…座ったら?」と向かいの席を誠二に勧めた。